ビールと発泡酒の違い、そしてクラフトならではの“発泡酒”の魅力

ビールと発泡酒の違い“発泡酒”の魅力
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はじめに – 「発泡酒=安いビール」だけじゃない

「発泡酒」と聞くと、安いビールの代わりというイメージを持つ方も多いと思います。
確かに、スーパーでよく見かける発泡酒は、麦芽を減らして税率を下げ、価格を抑えたものが中心。味わいも軽く、すっきりとしていて飲みやすいのが特徴です。
こうした背景から、「発泡酒=廉価版ビール」という印象が強くなっています。

でも、クラフトビールの世界には、全く違う理由で発泡酒になるビールがあります。
麦芽をたっぷり使っていながら、副原料の種類や使用量によって、法律上は発泡酒扱いになってしまう
同じ「発泡酒」でも、その背景や味わいは驚くほど違うのです。

ビールと発泡酒の法律上の違い

日本の酒税法では、麦芽の割合や副原料の種類・量によって品目が決まります。

項目ビール発泡酒
麦芽使用率50%以上50%未満 または 50%以上でも下記条件に該当
副原料の種類酒税法で認められた範囲のみ(米、コーン、スターチ、糖類 など)認められていない副原料を使用
副原料の使用量麦芽重量の5%未満麦芽重量の5%以上
代表例ラガー、ピルスナー、ペールエール など果物やスパイスを大量使用したクラフトビール、麦芽を減らした低価格商品 など

つまり、麦芽50%以上でも、副原料の種類や量によっては発泡酒になるのです。

クラフト発泡酒の魅力と副原料の種類

クラフトブルワリーは、個性や季節感を表現するために副原料を積極的に使います。
そのため、麦芽50%以上でも、規定量を超える副原料や認められていない素材を使うことで、発泡酒に分類されることがあります。

副原料には大きく分けて2タイプがあります。

  • 風味系副原料:味や香りに変化を与えるもの(果物、スパイス、ハーブ、はちみつ、カカオなど)
  • 機能性副原料:口当たりや見た目、醸造工程に影響を与えるもの(オーツ麦、小麦フレーク、乳糖、カラギナンなど)

ブルワリーと発泡酒免許

実は日本のクラフトブルワリーの中には、発泡酒免許しか所持していない醸造所も少なくないです。これは決して「格下」という意味ではなく、制度上の理由によるものになります。ビール免許は取得ハードルが高く、必要な製造量も多い。一方で発泡酒免許は比較的取りやすく、小規模から始められるため、クラフトブルワリーにとって現実的な選択肢となっています。

そのため、一部のブルワリーでは免許区分に合わせるために工夫を凝らしている。たとえば、カラギナン(海藻由来の成分)をほんの少量加えて“発泡酒”として届け出るケースや、副原料としてフルーツを基本的に使用してビールではなく発泡酒として分類するスタイルをとるところも結構あります。

背景にはもちろん「発泡酒免許の方が取得しやすい」という事情があるし、さらに言えば 酒税の違い も大きいです。日本の酒税法では麦芽使用比率や副原料の扱いで税額が変わるため、小規模醸造所にとっては「発泡酒」として造った方が経営的に有利なことも多いのです。

2026年には「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」の税率が一本化される予定になっている。

こうした制度上の制約が逆に、クラフトの個性を引き出すきっかけにもなっています。フルーツやスパイスを副原料に取り入れることで、Hazy IPAやフルーツエールのようなスタイルが生まれやすくなるし、結果的に「クラフトならではの自由な発泡酒」というユニークな魅力が形作られていたりもします。

麦芽50%以上なのに“発泡酒”な実例

それではここから、公式情報で「発泡酒(麦芽50%以上)」と明記されている銘柄だけをご紹介します。 風味系と機能性、副原料のタイプごとに分けて、それぞれの味わいコメントも添えました。

風味系(スパイス・果物など)

1. 水曜日のネコ(ヤッホーブルーイング)

麦芽使用率75%以上、副原料(オレンジピール&コリアンダー)が5%超。
軽やかなベルジャンホワイトで、麦芽のふくよかさにオレンジピールとコリアンダーの爽やかさがふんわり香ります。後味はすっきり、でもほんのりスパイシーな余韻が楽しい一杯。
公式ページ:https://yohobrewing.com/
水曜日のネコを探す >> よなよなの里 エールビール醸造所(楽天市場)

2. 和梨のヴァイツェン(サンクトガーレン)

麦芽50%以上、日本で認められる量を超える和梨を使用。
ヴァイツェン酵母のバナナ香と、梨の瑞々しい甘みが見事に調和。スパイシーさは控えめで、まるで秋の果樹園をそっとかき混ぜたようなやさしい味わいです。
公式ページ:https://www.sanktgallenbrewery.com/
和梨のヴァイツェンを探す >> サンクトガーレン楽天店

機能性副原料

3. Octopus King(Nomcraft Brewing)

麦芽使用率50%以上、副原料にオーツ麦と小麦を使用。
マンゴーやパイナップルを思わせるトロピカルなアロマに、シトラスの爽やかさが重なる。アルコール度数が高めのダブルIPAながら、オーツと小麦の効果で飲み口はまろやか。重厚感とジューシーさを兼ね備えたヘイジーダブルIPA。
公式ページ:https://nomcraft.beer/
ノムクラフトを探す>>楽天市場

まとめ – ラベルの裏を読む楽しみ

同じ「発泡酒」でも、その理由はさまざま。
価格を抑えるために麦芽を減らした大手商品の発泡酒もあれば、素材の魅力を最大限に引き出すためにあえて副原料を多く使うクラフトビールもあります。今回紹介した3銘柄は、どれも造り手のこだわりが詰まった“クラフト発泡酒”。
ラベルの「発泡酒」という文字の裏に、どんな素材や狙いが隠れているのか——。
次に飲むときは、そんな背景を想像しながら味わってみてください。
きっと一杯がもっと豊かで、おいしい時間になるはずです。

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この記事を書いた人

はじめまして、Sです。
ビールは好きだけど、知識はまだまだ。クラフトビールに出会って、その奥深さと自由さに強く心を惹かれました。わからないことも多いですが、みんなと一緒に楽しみながら学んでいけたらと思っています。
特に好きなのはヘイジーなIPA。アメリカ産のビールに惹かれることが多い一方で、日本のものづくりから生まれるクラフトビールの可能性にも大きな期待を寄せています。
もっと多くのファンが増え、日本のビール文化が盛り上がり、やがて世界に誇れるビールが生まれていく。その流れの中に、少しでも関わっていけたらうれしいです!

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