ビールの新常識を発見。甘美で癖になる「デザート系ビール」の深い沼。

甘美で癖になる「デザート系ビール」の深い沼

最近、クラフトビールのタップリストで「スムージー」「ケーキ」「デザート」といったワードを見かけて、一瞬「ここ、ケーキ屋さんだっけ?」と錯覚したことはないだろうか。

グラスに注げばトロッとした液色、香りは完熟フルーツやチョコレート。ひと口飲めば「これ、本当にビール?」と脳がバグる──。そんな常識を軽々と飛び越える“飲むスイーツ”の世界が、ここ数年で一気に存在感を増している。その中心にいるのが、フルーツてんこ盛りの「スムージーサワー」と、ケーキをそのまま液体にしたような「ペストリースタウト」。

この記事では、この2つを入り口に「デザート系ビール」の正体を整理しつつ、禁断のペアリングについても触れていく。

目次

「デザート系ビール」という、ゆるい沼

まず、「デザート系ビール」という厳密なスタイルが定義されているわけではない。ここではあえてゆるく、

デザートをイメージして造られた、甘さとリッチさの強いビールたち

をまとめて、『デザート系ビール』と呼びたい。

ポジション的には、「とりあえず生!」と食事にあわせるというよりは

  • 食後のスイーツタイムに
  • 「今日はちょっと自分を甘やかしたい」夜に

ゆっくり向き合いたいタイプのビールたち。このファミリーに入ってくるのは、たとえばこんな面々。

  • フルーツピューレどっさりの スムージーサワー
  • ケーキや焼き菓子をイメージした ペストリースタウト
  • ラクトース(乳糖)+バニラでミルキーに振った ミルクシェイクIPA
  • レモンタルトやチーズケーキを狙った ペイストリーサワー

などなど。スタイル名というより、「あのスイーツの記憶を、ビールで再現してみよう」という遊び心の集合体、みたいな存在。

共通点は、副原料の使い方がとにかく攻めているところ。 フルーツピューレ、チョコ、カカオニブ、バニラビーンズ、ナッツ、メープル、シナモン、マシュマロなどなど。 まるでパティシエがブルワリーに転職したかのような材料が、惜しみなくタンクに投入される。

その甘党ワールドで、フルーツ側のエースがスムージーサワー、チョコ&焼き菓子側のエースがペストリースタウト、というイメージだ。

スムージーサワー:グラスの中のフルーツパーラー

スムージーサワーは、軽めのサワービールを土台に、発酵後、マンゴー、パッションフルーツ、ベリー、ピーチなどのフルーツピューレや果実をこれでもかと投入して仕上げる。

見た目はほぼジュースかスムージー。

  • とろっとした口当たり
  • ぎゅっと詰まった果実感

そのおかげで、ビールを飲んでいるというより「フルーツパーラーで頼んだ大人のスムージー」のような感覚になる。

面白いのは、ちゃんと“ビール側の主張”も残っている点。 ベースのサワービール由来の酸味がしっかり生きていて、甘くてジューシーなのに、後味はキュッとリセットされる。「甘いだけで終わらない」感じが、ハマる人を量産している理由のひとつだ。

アルコール度数は4〜6%くらいがまでが多め。見た目に反して飲みごたえもある。ホップの苦味はそこまで得意じゃないけれど、フルーティーなビールは好き、という人にも刺さりやすいスタイルだと思う。

ペストリースタウト:チョコレートケーキの黒いライバル

ペストリースタウトは、濃厚なインペリアルスタウトを土台に、チョコ、バニラ、ナッツなどのスイーツ素材をたっぷり投入して仕上げる。

ベースとなるスタウトのコーヒー感やビター感に、 カカオ、バニラ、キャラメル、ナッツ、シナモン、メープル、ココナッツなどの副原料の風味が重なり、

  • ブラウニー風
  • ガトーショコラ風
  • ティラミス風

といった“ケーキの人格”が生まれていく。

度数は8〜12%前後とリッチ。ねっとりとした口当たりと強い甘みがあり、小さなグラスでちびちび楽しむのに向いている。その濃厚さは、ビールというより「飲む高級チョコレートケーキ」のような感覚だ。

いわゆる普通の黒ビールとの違いは、甘さの方向性。 コーヒーっぽいビターさの上に、デザートワインやリキュールを思わせる甘さと香りが何層も乗ってくるので、もはや「食後酒」の領域に踏み込んでいる。

なぜ今、デザート系ビールが増えているのか

理由はいくつかありそうだが、ざっくりまとめるとこんな感じ。

  1. 「ビールっぽくないビール」として、新しい層に届きやすい
  2. 見た目が強い。とにかく写真に撮りたくなる
  3. ケーキ屋やカフェとのコラボがしやすい
  4. 「◯◯ケーキ風」「◯◯パフェ風」など、コンセプトが直感的に伝わる

デザート系ビールを入り口にクラフトビールにハマり、そこからIPAやラガーへ広がっていく“逆ルートのビールファン”も、いまは全然アリな時代。 「ビール=苦い」のハードルを、一回ふわっと飛び越えさせてくれるやさしい入口になっている気がする。

ちょっとだけペアリングの話:実は「甘い×甘い」の“追いスイーツ”もいける

「甘いビールに甘いスイーツを合わせたら、さすがにくどいのでは?」という疑問はごもっとも。 とはいえ、デザート系ビールは甘さの“種類”がスイーツ側と少し違うので、組み合わせ次第ではかなり気持ちよくハマる。

スムージーサワーは、たっぷりのフルーツとしっかりした酸味がセットになっているので、

  • レアチーズケーキ
  • レモンタルト
  • ヨーグルト系デザート

などと合わせると、ビールがフルーツソースの役割を果たす。間に挟むたび口の中がリセットされ、だらっと終わらない。

ペストリースタウトは、

  • ガトーショコラ
  • ブラウニー
  • 生チョコ

のような濃厚チョコ系と相性抜群。 チョコの甘さに対して、ビール側のロースト感とアルコールの温かみがエスプレッソのように全体を締めてくれる。

もちろん度数もカロリーもあるので、量は控えめに。 小さなグラスで少しだけ、あるいは数人でシェアしながら楽しむくらいがちょうどいい。

初めての一本、どう選ぶ? シンプルな攻略法とおすすめ

「種類が多すぎて選べない!」という人は、細かいスペックは一旦無視して、以下のポイントだけ見てみよう。

1. スムージーサワーは「好きなフルーツ」で選ぶのが正解

難しく考える必要ナシ。「マンゴーが好き」「ベリー系が食べたい」など、その時の気分に合うフルーツが使われている缶をジャケ買いしよう。

  • トロピカル系(マンゴー、バナナ等): 濃厚でとろみが強い「飲むデザート」感。
  • ベリー・柑橘系: 甘酸っぱくて、比較的さっぱり飲める。

【迷ったらこのブルワリーをチェック!】

2. ペストリースタウトは「度数9%以下」から試そう

このジャンルはアルコール度数10〜13%の怪物も多い。初回でそれに挑むと「重すぎた…」となりがちなので、まずは8〜9%台のものから入るのがおすすめ。

ラベルを見て「Vanilla(バニラ)」「Chocolate(チョコレート)」「Coffee(コーヒー)」など、自分が好きなスイーツの単語が入っているかどうかもチェックポイント。

【迷ったらこのブルワリーをチェック!】

  • 箕面ビール(大阪)「インペリアルスタウト」: 厳密には「ペストリー」と名乗っていないが、副原料なしで驚くほど濃厚なチョコやエスプレッソ感を表現している傑作。リッチな黒ビールの入門に最適。(※冬季限定が多い)
  • (海外勢だが定番)Founders Brewing「Breakfast Stout」: コーヒーとチョコを使った、アメリカの超定番スタウト。度数も8.3%と高すぎず、バランスが最高に良いお手本のような一杯。

もし専門店に行くなら、店員さんに「甘いのが飲みたいんですけど、おすすめありますか?」とシンプルに聞くのが、一番確実で早い近道だ。

デザートの時間に、ビールを連れてくる

デザート系ビールは、毎晩の定番というより、「今日は自分を甘やかしたい」日に開けたい一本だ。

スムージーサワーでフルーツパフェみたいな一杯を楽しむのもいいし、ペストリースタウトでチョコレートケーキの世界にどっぷり浸かるのもいい。その横には、ミルクシェイクIPAやペイストリーサワーといった“甘い親戚たち”も控えている。

ビールの枠を飛び出した“飲むスイーツ”の世界。まだ未体験なら、次のご褒美デーの一杯に紛れ込ませてみてほしい。「ビール、ここまで遊んでいいんだ」と、あなたのビール観が甘美に上書きされてしまうだろう。

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この記事を書いた人

はじめまして、Sです。
ビールは好きだけど、知識はまだまだ。クラフトビールに出会って、その奥深さと自由さに強く心を惹かれました。わからないことも多いですが、みんなと一緒に楽しみながら学んでいけたらと思っています。
特に好きなのはヘイジーなIPA。アメリカ産のビールに惹かれることが多い一方で、日本のものづくりから生まれるクラフトビールの可能性にも大きな期待を寄せています。
もっと多くのファンが増え、日本のビール文化が盛り上がり、やがて世界に誇れるビールが生まれていく。その流れの中に、少しでも関わっていけたらうれしいです!

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