心地いい。西川口の路地裏で見つけた、日常に溶け込む“手作り”ブリュワリー

Brow-Brew-House_外観

埼玉県・西川口の住宅街に、ちょっと変わったクラフトビールの醸造所があります。 お店の名前は「GROW BREW HOUSE(グロウ ブリュー ハウス)」。

元材木店を改装したという木の温もりを感じる空間と、醸造タンクを眺めながら出来たてのビールが飲めるライブ感が魅力のお店です。 今回は、ヘッドブリュワーの岩立(いわたて)さんに、お店のコンセプトやおすすめのビールについてお話を伺いました。

目指すは「街中華」。日常に溶け込むビール造り

お店に入ってまず驚くのは、その気取らないアットホームな雰囲気です。 岩立さんが目指しているのは、特別な日のためのお店ではなく、「家に帰って、寝室に行く途中にリビングを通るような感覚」で立ち寄れる場所。

GROW BREW HOUSE ヘッドブリュワー岩立さん
「パジャマで来られるくらい、リラックスしてほしいんです」(GROW BREW HOUSE/岩立さん)

「パジャマで来られるくらい、リラックスしてほしいんです」

そう語る岩立さんの言葉通り、取材中もご近所の常連さんがサンダル履きで現れたり、配送業者さんと親しげに挨拶を交わしたりと、まさにお店の境界線がない「街のリビング」のような光景が広がっていました。

ビール造りへのこだわりについて尋ねると、「特にないです(笑)」と照れ隠しで笑う岩立さんですが、その根底には確固たる想いがあります。

「流行りのスタイルを追うのではなく、自分が美味しいと思うもの、おじいちゃんになっても飲み続けたいものを作りたい。例えるなら、毎日食べても飽きない『街の中華料理屋さん』のような存在になりたいんです」

業界のトレンドよりも、目の前で飲んでくれるお客さんの笑顔を第一に考える。そんな実直なスタンスが、地域の人々に愛される理由のようです。

輝くタンクと、8円のお釣り

タップルームの奥、お手洗いへと続く通路からは、ビールが生まれる醸造タンクが鎮座している様子を間近に見ることができます。 作りたてが生まれる「工場」と、それを味わう「日常」がひとつの空間で繋がっているライブ感。輝くステンレスタンクを眺めながらグラスを傾けるのは、ここならではの贅沢な時間です。

ふと横を見れば、常連さんがお会計中。「はい、8円のお返しです」「あざっすー」 そんな気取らないやり取りと、工場の金属音が混じり合うBGMが、妙に心地よく響きます。

店内の雰囲気
店内風景
ビールの原料のモルト
ビールの元がここにも
ビールが生まれる醸造タンクが鎮座
ビールが生まれる醸造タンクが鎮座

キッチンがないからこそ生まれる「持ち込み」と「イベント」の輪

GROW BREW HOUSEのもう一つの特徴は、がっつりとした厨房設備を持たないこと。 そのため、フードの持ち込みは自由。「自分でおつまみを探してくる楽しさを感じてほしい」というスタイルです。

その代わり、週末には様々なイベントが開催されています。 月一恒例のハンバーガーや、他店とのコラボ出店、お話を伺った日はカウンターにおでん鍋が登場していました。驚いたのはそのお品書き。カウンターで飲んでいた常連さんが「字、上手いですね。これ書いてよ」と岩立さんに頼まれ、さらさらと書いているのです。さらに店の奥にあるピザ窯も、実は「お客さんからもらった」ものだとか。 作り手と飲み手の境界線がなく、みんなで一緒にお店を作っている。そんな温かい一体感も魅力のひとつです。醸造で出た麦芽カスを近所の養鶏場に提供し、そこで採れた卵を使ったり、地元のフルーツをビールに取り入れたりと、地域内での「美味しい循環」も生まれています。

近所の養鶏場に醸造で出た麦芽カスは提供されます
醸造で出た麦芽カスは近所の養鶏場に提供

来冬リリース予定! 「野生酵母」のビールに注目

現在、岩立さんが密かに仕込んでいるのが、「野生酵母(ブレタノマイセス)」を使ったビールです。 独特の複雑な酸味と香りが特徴で、タンクの中で1年半以上も熟成させているそう。

「効率は悪いけど、単純に味が好きだから作りたいんです」

リリース予定は来年の冬。流行とは真逆を行く、時間と手間をかけた「大人の遊び心」が詰まった一杯の完成が楽しみです。

まずはこれをオーダー! ブリュワーおすすめの3杯

初めて訪れる方のために、岩立さんにおすすめのビールを3つ教えてもらいました。

  1. R122(アール・ワン・ツー・ツー) 地元の国道122号線を名に冠したIPA。この街の空気そのもののような、GROWの看板ビールです。
  2. NK GOLD(エヌケーゴールド)「一番飲まれているのはこれ」と岩立さんも太鼓判を押す、反響No.1のラガー。飲み飽きないクリアな味わいは、まさに西川口の水のようです。
  3. Alumiur(アルミウル) ワインの搾りかすを使用した、酸味が特徴的な一杯。「原料は秩父まで自分で取りに行った」という、作り手の足と想いが詰まった作品です。

今回のセレクト:名刺代わりの一杯と、一期一会の限定酒

魅力的なラインナップの中から、今回はお店の看板である定番と、今しか飲めない限定の2杯をいただきました。

  • R122(名刺代わりの一杯)
  • 燁(よう)(季節限定)

「燁(よう)はね、もう多分今日でなくなります」

岩立さんのその一言に、思わず喉が鳴ります。 次に来た時にはもう会えないかもしれない一期一会の味。 定番で安心するのも良いですが、その時だけのライブ感を楽しむのも、工場併設のタップルームならではの醍醐味です。

名刺代わりの一杯「R122」
名刺代わりの一杯「R122」
メニューボード
R122のメニューボード
季節限定のビール
こちらは季節限定の「燁(よう)」
メニューボード
味が伝わるようなメニューボード

まとめ:西川口で「ただいま」と言える場所

美味しいビールはもちろん、岩立さんの飾らない人柄や、そこに集う人々の温かさに触れられる「GROW BREW HOUSE」。 ビール好きの方はもちろん、ちょっと誰かと話したい時や、一日の終わりにリセットしたい時に、ぜひふらりと立ち寄ってみてください。

西川口の路地裏には、世界中のどこよりも温かい、最高の「日常」が待っています。

お店の外観
西川口で「ただいま」と言える場所
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この記事を書いた人

はじめまして、Sです。
ビールは好きだけど、知識はまだまだ。クラフトビールに出会って、その奥深さと自由さに強く心を惹かれました。わからないことも多いですが、みんなと一緒に楽しみながら学んでいけたらと思っています。
特に好きなのはヘイジーなIPA。アメリカ産のビールに惹かれることが多い一方で、日本のものづくりから生まれるクラフトビールの可能性にも大きな期待を寄せています。
もっと多くのファンが増え、日本のビール文化が盛り上がり、やがて世界に誇れるビールが生まれていく。その流れの中に、少しでも関わっていけたらうれしいです!

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