2026年10月の酒税改正でビールはどう変わる?クラフトビールへの影響と発泡酒の値上がりをわかりやすく解説

スーパーの棚に並ぶビール・発泡酒・クラフトビールの缶

スーパーのビール棚を眺めていると、「ビール」「発泡酒」「ビール(発泡酒)」と表示が混在していて、何がどう違うのか気になったことはないでしょうか。2026年10月の酒税改正で、その複雑な構造がついに終わります。

目次

酒税改正の前に知っておきたい:なぜビールの隣に安い発泡酒が並んでいたのか

ビールが高くて発泡酒が安い——この構造は味の差ではなく、酒税の差が生み出したものです。日本の酒税法では長年、麦芽の使用比率(原料全体に占める麦芽の重量比率)によって飲料を区分し、比率が高い「ビール」ほど税率が高く設定されてきました。

各メーカーはその税率差を逆算し、麦芽を減らした「発泡酒」、大豆などを使った「第三のビール(新ジャンル)」を開発してきました。1994年にサントリーが「ホップス」を販売開始したのが大手が本格参入し発泡酒市場を形成した起点で、その後デフレによる価格競争の中で新ジャンルも登場、「のどごし〈生〉」「クリアアサヒ」などが定着していきました。つまり発泡酒・新ジャンルは、ある意味「税制のすき間を活用した商品」として生まれた側面が強いんですよね。

たとえば、スーパードライや一番搾りは「ビール」、淡麗グリーンラベルは「発泡酒(麦芽25%未満)」——棚で隣り合う缶でも、この区分の違いが価格差の正体でした。

ビール・発泡酒の分類について詳しく知りたい方はこちら → [ビールと発泡酒の違いって何?意外と知らない分類のしくみ](https://pintofbrew.beer/knowledge/difference-beer-and-lowmaltbeer/)

クラフトビールはどの区分に入る?

ほぼすべてのクラフトビールは麦芽50%以上の「ビール」扱いです。ただし、フルーツやスパイスを2018年改正の基準(麦芽重量の5%)を超えて使うと、麦芽をしっかり使っていても「発泡酒」表示になります。とはいえ中身はビール寄りのものがほとんどで、缶に「発泡酒」と書いてあっても、世界標準では立派なクラフトビールというものも少なくありません。

2026年10月、何がどう変わるのか

2026年10月1日に、ビール系飲料の税率が350ml換算54.25円に一本化されます。2020年から3段階で実施されてきた改正の、最終ゴールです。

ビール・発泡酒・新ジャンルの酒税推移グラフ 2020年〜2026年
2026年10月、4つの区分の税率が54.25円に一本化される


缶1本(350ml)あたりの税額の変化はこうなります。

区分〜2026年9月2026年10月〜 変化主な例
ビール
(麦芽50%以上)
63.35円 54.25円▼ 9.1円クラフトビール全般、国産大手ビール
発泡酒
(麦芽25%以上50%未満)
54.25円 ※1 54.25円 変化なし一部の発泡酒、発泡酒表示クラフト(副原料超過)
発泡酒(麦芽25%未満)46.99円54.25円▲ 7.26円淡麗グリーンラベル等の低価格帯発泡酒
新ジャンル
(2023年に発泡酒に統合済み) ※2
46.99円 54.25円▲ 7.26円のどごし〈生〉、クリアアサヒ等(現在は発泡酒として販売)

※1 麦芽25%以上50%未満の発泡酒は段階的に引き下げられ、2023年10月にすでに54.25円へ到達済み。そのため2026年10月の一本化では税額は変わりません(旧税額の推移:2020年改正前62.34円→58.49円→54.25円)。  

※2 新ジャンルは2023年改正で発泡酒(麦芽25%未満)に統合済み。参考として2020年改正前の旧税額は28円→37.8円(2020年10月)→46.99円(2023年10月・発泡酒統合)と段階的に引き上げられてきました。

出典:[財務省「酒税に関する資料」](https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d08.htm)/[国税庁「酒類にかかる税金(酒税)はどのくらいですか」](https://www.nta.go.jp/taxes/sake/qa/01/03.htm)

ここで少し補足しておくと、発泡酒には税率が2段階ありました。麦芽比率が25%以上50%未満のものと、25%未満のもの。前者はすでに54.25円に達していて据え置き、スーパーでよく見かける低価格帯(麦芽25%未満)のほうは、もともと税額が低かった分、今回の一本化で7.26円上がります。

なお「第三のビール(新ジャンル)」は2023年の改正で発泡酒に統合されており、現在は「発泡酒」として販売されています。2026年10月に、その税率も54.25円に揃うというのが今回のゴールです。

で、クラフトビールを飲んでいる自分には関係ある?

値段が下がるか、正直なところ

クラフトビール(ビール表示)は税額が約9.1円下がります。ただし、それが定価に反映されるかどうかは醸造所によってまちまちです。原材料費や物流コストの高騰もあり、「値下がり期待」より「値上がりが少し抑えられるかも」くらいに構えておくのが現実的かもしれません。

「値下がりするかも」という期待より、「市場の変わり目を面白がる」くらいの気持ちで眺めるのが個人的にはちょうどいい

価格差が消えたとき、何が変わる?

これまで「安いから発泡酒(麦芽25%未満)」で選んでいた人にとっては、価格差という理由が少し薄くなる変化です。

これはクラフトビールにとって、悪い話ではありません。大手メーカーも価格ではなく中身で勝負する方向に舵を切っています——サントリーは、これまで発泡酒として販売していた「金麦」シリーズを、税率が揃う2026年10月にビール品目へ変更すると公式に発表しており、キリンも同様の動きを検討中です。「安いから選ぶ」という軸が業界全体で薄まっていく。それは、味やストーリーで選ばれてきたクラフトビールが本来いちばん得意とする土俵です。

逆に「今のうち」なクラフトもある — フルーツ全開のスムージーサワー

クラフトビールは基本「ビール」区分で、税額は下がる側。発泡酒表示のものも、多くは麦芽をしっかり使った“ビール寄り”で、下がるか変わらないかのどちらかです。

——でも、ひとつだけ例外が。さっきの表で、ビールが下がるなか“上がる”側だった あの行(▲7.26円)、覚えていますか。マンゴーやパッションフルーツの果汁をピューレのように詰め込んだ「スムージーサワー」は、果汁が麦芽を上回って麦芽25%未満の「発泡酒」に入ることが多く、大手の低価格発泡酒と同じ“上がる側”。中身はまぎれもない本格クラフトなのに、です(宇宙ブルーイングの人気シリーズなどがここ)。

定価にどう跳ねるかは銘柄しだいですが、気になっていたあの果実感、税率が変わる前に一度どうぞ。

税率変更前に飲んでおきたい、クラフトビール

フルーツ全開のクラフト「スムージーサワー」を探す
https://search.rakuten.co.jp/search/mall/smoothie+Sour

よくある疑問:酒税改正2026のQ&A

Q:発泡酒は2026年10月以降、値上がりするの?

A:区分によって異なります。麦芽25%未満の低価格帯発泡酒は税額が約7.26円上がるため、価格に転嫁される可能性があります。一方、麦芽25%以上50%未満の発泡酒は税額が下がる方向です。大手の中には「値上げ」ではなく「ビール品目へ変更して価格を維持する」方針を選んだところもあり(サントリーが公式に発表)、秋以降の棚は見た目からして変わりそうです。

Q:クラフトビールの値段は下がる?

A:ビール区分(麦芽50%以上)の税額は約9.1円下がりますが、原材料費・物流費等もあるためケースバイケースです。「少し値上がりが抑えられるかも」程度が現実的な見立てです。

Q:「第三のビール」はもう存在しない?

A:2023年の改正で発泡酒に統合されました。現在は「発泡酒」として販売されており、2026年10月に税率も統一されます。飲み物自体がなくなるわけではありません。

Q:「発泡酒」表示のクラフトビールはなぜ存在するの?

A:2018年の酒税法改正で、フルーツやスパイスは麦芽重量の5%以内であればビールの副原料として認められるようになりました。ただし、それを超える量を使う場合はビールと申告できず、麦芽比率に関わらず「発泡酒」表示になります。世界標準では「ビール」として扱われるスタイルでも、日本の酒税法の区分では発泡酒になるケースがあるということです。

Q:発泡酒って、そもそもなぜ2種類の税率があったの?

A:麦芽の使用比率が25%以上50%未満のものと、25%未満のものとで、もともと税額が違いました。比率が高いほどビールに近いため、旧来の税体系では「ビールに近い→高め」「麦芽が少ない→低め」という論理で2段階に設定されていたのです。2026年10月の一本化でこの区別も解消されます。

Q:チューハイやサワーは値上がりするの?

A:ビール系とは別枠ですが、「その他の発泡性酒類(チューハイ等)」も2026年10月に350ml換算で約28円→35円へ引き上げられます。ちなみに、この記事で紹介した”スムージーサワー”は名前に「サワー」と付きますが、チューハイではなく乳酸で酸味を出したビール(発泡酒表示)です。別物なのでご注意を。

Q:小さなクラフトビール醸造所への影響は?

A:ビールカテゴリの税率は下がる方向なので、醸造所にとってはわずかにポジティブな変化です。それより大きいのは「価格だけで選ばれない市場」になること。味・ストーリー・地域性で選ばれやすいクラフトビールには、むしろ追い風になるかもしれません。

まとめ

2026年10月の酒税改正(ビール系飲料税率の一本化)は、「ビール税が高い・発泡酒が安い」という30年来の構造が変わる出来事です。発泡酒にも2段階の税率があって、それが一本54.25円に揃う——棚の前で価格だけを見て選ぶ理由が、少しずつ薄れていきます。

発泡酒表示のクラフトビールも含めて、次に棚の前で迷ったとき、まずは1本、発泡酒表示のクラフトビールを試してみてください。「これ、発泡酒って書いてあるけど全然違う」——そんな発見が、クラフトビールへの入口になります。

→ ビール・発泡酒の分類についてもっと知りたい方はこちらも。
ビールと発泡酒の違いって何?意外と知らない分類のしくみ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

はじめまして、Sです。
ビールは好きだけど、知識はまだまだ。クラフトビールに出会って、その奥深さと自由さに強く心を惹かれました。わからないことも多いですが、みんなと一緒に楽しみながら学んでいけたらと思っています。
特に好きなのはヘイジーなIPA。アメリカ産のビールに惹かれることが多い一方で、日本のものづくりから生まれるクラフトビールの可能性にも大きな期待を寄せています。
もっと多くのファンが増え、日本のビール文化が盛り上がり、やがて世界に誇れるビールが生まれていく。その流れの中に、少しでも関わっていけたらうれしいです!

目次