数字でわかる「強さ」の階段。単にアルコール度数が高いだけじゃなかった!
ビアバーのメニューや酒屋さんの棚で、IPAの文字の前に「Double(ダブル)」とか「Triple(トリプル)」なんて言葉がついているのを見て、「これ、普通のIPAと何が違うんだろう?」と思ったことはありませんか?
もちろん、メニューには「ABV(アルコール度数)」が書いてあるので、数字を見れば「7%」とか「9%」とか、いつものビールよりお酒として強いことは分かります。
でも、「何がどう『ダブル』なのか?」と聞かれると、正直よく分からなくないですか?
「アルコール度数が高いと、自動的にダブルになるの?」 「それとも、ホップを2倍入れてるからダブルなの?」
以前の私は、この定義がよく分かっていなかったので、メニューを見ても「なんとなく強そうなIPAがあるな」くらいの感覚で、その違いを深く気にせず飲んでいました。
そこで、「本当はどうなんだろう?」と気になって改めて調べてみたんです。 すると、そこには醸造上の面白い仕組みと、明確な「味の変化」があることが分かりました。単にアルコールが高いだけじゃなかったんですよね。
今回は、クラフトビールの代表的なスタイルの一つである「West Coastスタイル(クリアで苦いIPA)」を例にして、この「IPA、Double、Tripleの違い」について整理してみたいと思います。
言葉の意味と仕組みを知ると、メニューの数字を見るのがちょっと楽しくなりますよ。一緒に学んでいきましょう!
ダブルIPAの起源
ダブルIPAは、1990年代半ばのアメリカ西海岸で生まれた、IPAをさらに力強く発展させたスタイルです。当時のクラフトビールシーンでは、既存のスタイルに収まらない大胆な味づくりが進んでおり、その流れの中で、ホップの香りや苦味をより強く打ち出し、アルコール度数も高めたビールとしてダブルIPAが登場しました。
その起点としてよく語られるのが、1994年にさかのぼります。ちょうど、日本では酒税法改正が行われた年ですね。その1994年にBlind Pig Brewingが造ったビールが後のダブルIPAの原型のひとつとされており、その特徴は強いホップキャラクターと飲みごたえのある設計でした。このビールが、多くのビールファンに強烈な印象を与えたのが発端となります。
その後、このスタイルは他のブルワリーにも広がり、russian river brewingやstone brewingといった醸造所が同じようなスタイルのレシピを開発し、代表的な銘柄を生み出したことにより、ダブルIPAは更に知名度を広めて行きました。
そして今までなかった、濃密なホップアロマ、しっかりした苦味、高めのアルコール感を備えたこのスタイルは、より刺激的で個性的な味わいを求めるクラフトビールファンに支持されるようになっていきました。
2000年代に入ると、ダブルIPAをテーマにしたイベントやフェスティバルも登場し、スタイルとしての認知はさらに拡大。こうしてダブルIPAは、一時的な流行ではなく、アメリカンクラフトビールを象徴する人気スタイルのひとつとして定着していったのです。
数字で見る!「強さ」の3段階
まずは細かい理屈は抜きにして、ざっくりとした「ランク」を整理してみました。 お店でメニューを見る時、私はこの数字(アルコール度数)を自分の中の「ものさし」にしています。

上の図のように、アルコール度数によってざっくり3段階に分かれています。それぞれの数字と、私が実際に飲んで感じているイメージを文字にするとこんな感じ
- Lv.1:IPA(スタンダード)
- 度数目安: 6.0% 〜 7.5%
- イメージ: いわゆる「普通サイズ」。ゴクゴク飲める。
- Lv.2:Double IPA / Imperial IPA
- 度数目安: 7.5% 〜 9.0%
- イメージ: 「大盛り」「特盛」。ガツンとくる飲みごたえ。
- Lv.3:Triple IPA
- 度数目安: 9.0% 〜 12%超
- イメージ: 「限界突破」。もはやビールというよりリキュールに近い。
ここで一つだけ大事な注意点があります。 実はこの数字の分け方、「厳密な決まり(法律)」があるわけではないんです。
あくまで一般的な目安であって、最終的なネーミングは造り手(ブルワリー)の自由。
- 「うちはアルコール7.5%でも、飲みやすさを重視してるから『IPA』と呼ぶよ」という職人もいれば、
- 「度数はそこまで高くないけど、ホップを限界までぶち込んだから、気合を入れて『Double』と名乗るぜ!」というパンクなブルワリーもいます。
なので、上記の数字はあくまで「私なりの目安のものさし」として捉えてください。 メニューの数字と名前が少しズレていても、それは「作り手のこだわりや気分」なんだな、と受け止めるのがクラフトビールの楽しみ方です。
「Imperial(インペリアル)」って何?
ちなみに、メニューによっては「Imperial IPA」と書かれていることもありますよね。 調べてみると、これは「皇帝」のような偉大さ、という意味で使われる言葉ですが、基本的には「Doubleと同じもしくは、Tripleくらいの度数高めなビール」と考えて大丈夫そうです。
つまり、「Double または Imperial と書いてあったら、ちょっと気合を入れて飲むビール」という合図です。
なぜ「Double(2倍)」なの? 苦いだけじゃない秘密
ここでひとつの疑問が湧きます。「ダブルって、何がダブルなの? ホップの量?」
もちろんホップもたくさん使われているのですが、実は「麦芽(モルト)」の量も増えていることが一番のポイントだそうです。
少し醸造の仕組みの話になりますが、アルコールを作るのは「酵母」です。酵母が麦芽の「糖分」を食べて、アルコールに変えます。 つまり、高いアルコール度数(DoubleやTriple)を作るには、エサとなる糖分(麦芽)を大量に投入する必要があるんです。
シンプルな説明をすると普通のIPAよりも、ホップ量を増やし、モルト量を増やし、アルコール度数を高くしたものという事になります。また、オールドスタイルと言われる昔ながらのIPAはビタリングホップの量も今よりも多く使いしっかりIBUを上げたビールが多かったので、doubleになるとより高IBU狙いのレシピで大量ホップを使っていたようです。
昨今、トレンドが少し変わってきているため、皆さんもよくウエストコーストIPA(WCIPA)というスタイルを耳にする様になっていると思いますが、このWCIPAも最近ではビタリングホップを大量に入れるという仕様ではなく、大量のアロマホップをメインに設計するブルワリーが数多く見られます。
故に、DoubleやTripleは、単に苦い単純にハイアルコールで苦いというビールではなく、「甘く感じる要素」と「苦味や渋味と言われる要素」の他に「ホップフレイバー(フルーティー)」がパワーアップした濃厚な液体だということなんですね。
また、単純にダブルだからといって「甘くてボディが重い」というわけではなく、ハイアルコールにするからこそボディーはシングルIPAよりもドライに設計しているものも多く、単純にダブルでモルトが多いからと言って甘いビールでは無いということですね。
甘味に関しては勿論麦汁の糖分やモルトフレーバーもありますが、DIPAやTIPAはアルコール度数が高くなるのでこのアルコール由来の甘味も感じられるという事も要素の1つです。そしてこの、甘味・酸味・苦み・香りによる各ブルワリーの設計されたレシピにより、美味しいビールが完成するという事ですね。これを知って「なるほど!」と思いました。
飲んでどう違う? 身体で感じる違い(West Coast編)
では、実際に飲むとどんな違いを感じるのでしょうか? 私が個人的に感じている「飲み心地のグラデーション」を言葉にしてみました。 (※ここでは、分かりやすく基本のクリアな「West Coastスタイル」を想定しています)

1. IPA(India Pale Ale)
「キレと爽快感」 やっぱりこれです。程よいホップのアロマに、後味はドライでキレがいい。ハンバーガーや餃子など、脂っこい食事と一緒にゴクゴク飲んで、口の中をリセットするのに最高です。
このスタイルのおすすめ 迷ったらまずはこれ!IPAの基準点とも言える1本
おすすめシチュエーション: とりあえずの1杯目や、食事と一緒に。
2. Double / Imperial IPA
「ガツン!からの、じわ〜っ」 口に入れた瞬間、IPAよりも「トロッ」とした粘度を感じる液体もあります。そして強烈なホップのアロマが来た後に、ボディーの厚みと絶妙な設計によるキレによりスルスルと飲めてしまう一杯ですが、ハイアルコールなので気を付けて。
このスタイルのおすすめ ガツンとくるクリアなのに濃厚なボディとスルスル感。これぞダブル!という満足感。
おすすめシチュエーション: 2杯目以降、お腹が落ち着いてから。会話しながらゆっくりと。温度変化も楽しみながら。
3. Triple IPA
「アルコールの熱さと、濃厚な蜜の味」 ここまで来ると、もはやビールという枠を超えた体験になります。 空っぽの胃に入れると、まるでウイスキーのような「カーッ」とくるアルコールの熱さを感じます。ものによっては飲み口でアルコールを全く感じない物もあるのでお水(チェイサー)と一緒にどうぞ。
このスタイルのおすすめ なかなかお目にかかれないレアなスタイル。見つけたら即買いです。
おすすめシチュエーション: 食後のデザート代わりや、一日の締めくくりに。映画を見ながら1時間かけて飲むような贅沢な夜に。
まとめ:自分の「適正強度」を知ろう
いかがでしたか?
「Double」や「Triple」という言葉は、単なる強さ自慢ではなく、「今日はどんな気分でビールと向き合いたいか?」を選ぶためのガイドラインだったんですね。
- スカッとしたいなら、IPA。
- じっくり浸りたいなら、Double。
- 非日常へ飛びたいなら、Triple。
この階段を意識するだけで、メニュー選びはもっと楽しくなるはずです。
…と、ここまで「IPA」を前提にお話ししてきましたが、実は最近流行りの「Hazy IPA(濁ったIPA)」については、少し事情が違うようなんです。
Hazyの場合は、Doubleになっても「苦く」ならず、むしろ…? さらに、缶のラベルでよく見る「DDH」という謎の呪文についても気になりますよね。
次回は、この「HazyにおけるDoubleの正体」と、「West Coastとの決定的な違い」について、一緒に深掘りしていきたいと思います!

